私には祖母がいます。昭和3年生まれ、90歳オーバーのおばあちゃん。
今でも現役1人暮らし。 マイペースで ちょっぴり自分勝手。でもどこか憎めない。
たまにツッコミを入れたくなることもあるオモシロおばあちゃん。
おばあちゃんと一緒に過ごす時間には何かが起きる!
そんなおばあちゃんと私の日常を綴る祖母日記。
この日は珍しく おばあちゃんからのリクエストが入りました。
あみがさ餅を買いに行けるか?
他の記事には何書いたんだぁ?
おばあちゃんのリクエスト
休日には事前に連絡しておばあちゃんの様子を見に行く私。
車を走らせ、もいつものようにおばあちゃん家に到着、様子を伺います。
今日はどうする?
すると、おばあちゃんからの突然のリクエスト。
「あみがさ餅を買いに行きたいんだけど、行けるか?」
おばあちゃんが珍しく自分からやりたいことを話してくれたので、何があったのかを聞いていきます。
「これ見てくれや」
どうやら、おばあちゃんがあみがさ餅を買いに行きたいと思ったきっかけは、自治体から無料で配られている広報に掲載されたお店がきっかけでした。
お目当てのお店は、おばあちゃんが若い頃からやっている和菓子屋さん 。
おばあちゃん情報によると、
先代の大将がやっている頃は大人気のお店で、あみがさ餅は看板商品だった。
しかし、先代が引退して若嫁がお店を切り盛りするようになってからは、売上を目的にして品質が落ちてしまったから客離れが起きてしまったそうな。
そんなお店が広報に掲載されて久しぶりに食べてみたいと思った様子。
そもそもばあちゃんの思い込みで本当に品質が落ちたかなんて私には分かりません。
年寄りの思い込みは完全に自分の都合のいい解釈だからなぁ…。
まぁ、おばあちゃんがやってみたいということであれば何でもチャレンジさせてあげたいと思っている私なので、即決で買いに行くことにしました。
「今日はお店がやっている曜日だなぁ」
おばあちゃんも確認しています。
おばあちゃんを車に乗せて、お店に向かうことにします。
お目当てのお店に行くも…
お目当てのお店は狭い路地に入ったところにあります。
車が何とか1台通り抜けられるような道幅で、対向車が来たらすれ違うことはできない。
そんな道にいくつかのお店が軒を連ねてます。
何でもこの通りは昔のメインストリートだったとのこと。
確かに、おもむきのある雰囲気の街灯や電柱に掲げられた看板から商店街の名残を感じられます。
まだ自家用車が一家に一台の世の中になる前の、昭和のレトロな雰囲気を感じる商店街をゆっくりと車で通り抜けていきます。
この通りには今でも呉服店や雑貨屋、飲食店や日用品を扱うお店まで様々なおもむきのあるお店が並んでます。
その通りを抜けてようやくお目当てのお店の前に到着。
しかし何か様子がおかしい。
シャッターが閉まっていて張り紙が書いてあります。
「どうなっとるんだ?」
気にするおばあちゃんを車に残し、お店の様子を見にシャッターに駆け寄る私。
誠に勝手ながら、6月末から8月のお盆までの間お休みをいただきます。(店主)
マジか…
てか、2か月近くの休業期間ってどんなけ休むのよ。
さすが地元のローカル店なだけあって、経営方法も自由だなぁ。
お店が休みなのはしょうがない…。
休業の事実をおばあちゃんに伝えます。
「なんだぁ、休みなのか。せっかく来たのに。どうするだぁ」
晴れを期待していたのに雨でも降ってきたかのような表情で、おばあちゃんは残念そう。
楽しみにしていたおばあちゃんが残念な表情になっている。
さすがにこのままでおばあちゃんを家に帰すわけにはいかない。
そこで私は切り出します。
「おばあちゃん別でもう一店、和菓子屋さんがあるから、そこに行ってみよう。」
おばあちゃんの気が落ち込まないように声をかけ車を走らせます。
雨のち晴れ
車を走らせて5分ほどで別の和菓子屋さんに到着。
このお店は数年前にリニューアルしたお店で店内も広々と開放的。
道路拡張の影響で移転を余儀なくされたお店で、以前に使っていた建物の部材をうまく利用しています。
入り口の扉は以前使っていたお店の扉を使っており、老舗の雰囲気を残しながらも新しさも兼ね備えたお店です。
さっそくおばあちゃんはお饅頭を物色。
「どれにしようかなぁ。」
時間をかけてゆっくり選んでもらいます。
いろんな種類の6個入りのお饅頭に決まった様子。
そこにプラスしてお年寄りが大好きなおこわも購入。
買うものは決まったのでお店の人に伝えてお支払い。
お店の人がおばあちゃんに声をかけてくれます。
「おばあさん、歳はいくつなの?お元気そうだね」
「昭和3年生まれ。まぁじきに95歳になるわ」
「私のおばあさんは調子が悪くて入院しちゃってね。95歳でそんだけ元気だったら素晴らしいわ」
「今日はね、95歳の人限定でプレゼントするっていうイベントやってるんだよ。おばあちゃん95歳だから、お饅頭 1個、プレゼントするね」
そう言って購入した袋の中に、お饅頭を1つ そっと入れてくれた店員さん。
「ほぉ~」
おばちゃんは袋を受け取ります。
いやいや、おばあちゃんさ、95歳の人限定でお饅頭プレゼントするとかって実際やってないから。
てか、95歳の人限定のイベントがあるとしたら、95歳の人がお饅頭買いに来るってどんだけ 年寄りが多い地域やねんって話。
お店の人が気を聞かせて プレゼントしてくれたのにおばあちゃん 当たり前みたいな感じで受け取ってるけど…。
おばあちゃん、ありがとうとか何も感謝してないじゃん。
なかなか読み取れてないおばあちゃんに僕は声をかけます。
「おばあちゃんが95歳だからね、お饅頭を1個プレゼントしてもらったんだよ。ありがたいことだよね。」
おばあちゃんにそう声をかけてお店の人に感謝をします。
家に帰ってからもう一度おばあちゃんに説明。
「要するに、おばあちゃんは1個、お饅頭を無料でもらえたんだよ 」
そう話すと理解をした様子。
「なんだ、よかったなぁ 」
おばあちゃんの表情にも晴れやかな笑顔が戻ります。
最初に行ったお店であみがさ餅が買えなかったおばあちゃん。
でも結果的にはお饅頭を1個プレゼントしてもらって笑顔になったおばあちゃん。
お饅頭を買いに行ったおばあちゃんの心もようは気まぐれな天気そのもの。
結果オーライの心もようは雨のち晴れになったのでした。